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メディアとテクノロジーの交差点

ヒップホップの教祖Russel Simmons率いるAll Def Digital、YouTubeチャンネル登録者数100万突破でマルチプラットフォーム展開へ

とにかく再生数を集めるMCNモデルから、ターゲットが明確なバーティカルなオンライン動画メディアブランドの時代に間違いなく移ってきている中で、All Def Digitalのチャンネル登録者数が100万人を突破、なかなか好調に推移しているようです。

 

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All Def Digitalは、ヒップホップの歴史(というより音楽の歴史)を語る上で絶対欠かすことができないDef Jamを、Rick Rubinと共に創設したあのRussell Simmonsが、自身の会社であるRush Digital MediaとAwesomenessTVの支援のもと、2013年に立ち上げたオンライン動画メディアブランド。バイアコム傘下のBET(Black Entertainment Television)のオンライン版とでもいうべきポジションで、いわゆるアーバンミュージックが好きなミレニアル世代がターゲットとなっているYouTubeチャンネルです。初期からオリジナルコンテンツの製作に積極的で、支援元のAwesomenssTVのスタジオ(West Hollywood)で活用していました。 

 

Russell Simmonsは1984年に創設したDef Jam Recordingsで、Public Enemy・The Beastie BoysLL Cool Jなど、伝説のアーティストを多数輩出、その後Phat Pharmというファッションブランドを立ち上げて巨万の富を築きました。さらに「Def Comedy Jam」というアフリカン・アメリカンスタンドアップコメディアンを取り上げた番組をHBO向けにプロデュース。商才がすごくて、天才プロデューサーと呼ばれている人物です。

そんなRussell Simmonsは、今度はケーブルテレビの専門チャンネルを立ち上げるということを考えていたそうです。しかし、専門チャンネルはオリジナル番組の製作にコストがかさむのと(初期は放送枠をとにかく埋めなくてはならない)、何より時代はそっちじゃないっていうことを捉えて、オンラインにフォーカスすることを決めたそうです。ちなみに、逆にこの時期にSean Diddy CombはRevolt TVという専門チャンネルをケーブルテレビに立ち上げていますが、視聴者の獲得に苦労してるという話もあります。

 

“There was Tastemade for food, MiTu in the Latino category, Styehaul – all these vertical players that you know. No one had really stepped up into the category that historically is referred to as urban.”

 

「食」に特化したTastemadeやラテンアメリカ人向けのMituなど、様々なバーティカル動画メディアのブランドが立ち上がっていたのにも関わらず、まだアフリカン・アメリカンのミレニアル世代向けのオンライン動画メディアのブランドが立ち上がっていない。そんなことも、All Def Digitalをオンラインで立ち上げようと考えた大きなキッカケだったと、All Def DigitalのPresident/COOであるSanjay Sharmaがインタビューで振り返っています。

All Def Digitalは、その後シリーズAのファイナンスでGreycroft Partners(Maker Studios・AwesomenssTV・HuffPostなどにも出資)・Advancit Capital(米国のメディア界のドンとも言えるCBSViacomのオーナーであるSumner Redsotneの娘であるShari Redstoneが運営するファンド)・Nu Horizons Investments・e.venturesから総額500万ドルを調達。

人材獲得やオリジナル番組の製作を加速させるとし、経営体制も強化。調達に先駆けて、2014年7月にはゲーム特化のMachinimaの初期からの社員で、VP of Strategy and Business DevelopmentとしてMachinimaをリードしていたSanjay Sharmaを初のPresident/COOとして採用しています(Machinimaの前はWarner Bros. Picturesのビジネスと法務の部門で働いていたようです)。

 

写真左がSanjya Sharma, President/COO of All Def Digital

ちなみにこの調達が発表された2014年8月時点のチャンネル登録者数は275,000人、累計で5,200万以上再生されていました。そこから1年ちょっとで登録者が100万超っていうのは、かなりの伸び率です。

さて、All Def Digitalは、多くのMCN(Multi-Channel Network)がMPN(Multi-Platform Network)と呼ばれるのに倣うように、YouTubeだけでなく、今後Facebookを中心に他のプラットフォームへの展開を強化。 またAll Def DigitalはHBOとファーストルックディールを結んでいて、番組の企画開発も進んでいるようです。Viceと同じように、最終的にはケーブルテレビの専門チャンネルになるというシナリオも、中長期的にはあるかもしれません。

FacebookやSnapchatなど、動画に注力しているプラットフォームが台頭してきている中、バーティカルでオリジナルの動画を配信するメディアブランドがどんどん注目されていくのは、間違いないと思います。