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メディアとテクノロジーの交差点

Vice MediaがA+EのH2をリブランド化し、来年2月末までに新チャンネル「VICELAND」開局へ

 

A+E Networksがもともと展開していたH2というチャンネルをリブランド化して、Vice Mediaがついにテレビ専門チャンネルに進出。チャンネル名は「Viceland」で、来年早々、遅くとも2月末までに立ち上げます。番組はオンラインやHBOで展開されているようなドキュメンタリーを中心にインハウスで作られる模様。尚、H2は既に全米7000万世帯にリーチしています(ただ今後もパッケージに入れるかはMVPD:Multichannel Video Programming Distributorsとの契約次第)。

この動きはHearstとDisneyのJVであるA+E Networksが2.5億ドルVice Mediaに出資したタイミングから予期されていたことですが、これが実現することでA+EはVice Mediaの株式20%を保有することになるようです。既定路線。

 

 

いわゆるミレニアル世代にリーチすることを目的とした専門チャンネルの立ち上げは、同世代のテレビ離れが叫ばれている中でリスキーな投資という声も。例えば「不都合な真実」やNetflixの「Beasts of No Nation」の製作も行なってきたParticipant Mediaが展開するPivotという専門チャンネルも、ミレニアル世代向けにドキュメンタリーなどを展開していますが、視聴者の獲得に苦戦していると伝えられています(ちなみにPivotがJoseph Gordon-Levittと一緒に作っている「HitRecord on TV」という番組が太刀打ちできないくらいすごいです)。

A+EとしてはViceのブランドの強さで視聴者を獲得できるとしており、加えてOTTサービスでのバンドル化も想定しているようです。Vice Mediaは、これで想像し得るあらゆる出口に番組を提供することになり、映画や長尺番組からYouTubeやSnapchat向けの短尺動画まで、全てに対応することになります。新しい広告手法も試されるでしょうし、グローバル展開も加速することになると思います。

 

“First: It allows us to be truly platform agnostic and enable our audience to view our content wherever they want. Second: It represents a continued growth in our content quality and raises the ceiling even higher for our brilliant teams to attack stories from long form features to multi-episode series and even short form interstitials that will challenge the accepted norms of current TV viewing. Third: We will test new and innovative monetization strategies placing Viceland at the pointy tip of the spear of the rapidly changing terrain of TV advertising.”

 

 

 

Netflixが来年後半に中東市場に参入、既にEMEA領域の人材採用も進行中

 

Netflixが来年後半に中東市場に参入すると、NetflixのVP of communications for EMEAであるJoris Eversが発表。すでに求人情報も出ているようです。ちなみにEMEAはEurope, the Middle East and Africaのこと。

Manager, Marketing Planning & Analysis - EMEA
Senior Manager - EMEA Marketing Insights

中東市場は既にOTTサービスのOSN Play・Telly・Starz Play・IcFlixが参入済みでしのぎを削っている状況。Starz Playは中東だけでなく、北米も含めて競合関係にあり、Starz Play Arabiaは中東・北アフリカの17カ国で展開中。IcFlixはインド映画やエジプトのスタジオの作品をアラビア語の字幕を付けて配信し、現在会員25万人。

 

Amazon Studios初の映画「Chi-raq」(Spike Lee監督作品)、12月4日に公開へ

 

 

Amazon Studios初の映画「Chi-raq」の公開、12月4日に。監督はSpike Lee。個人的にファンなので楽しみです。Spike Leeは前作「Da Sweet Blood Of Jesus」もKickstarterを使って資金調達し、劇場公開前にVimeoで配信するなど、監督の立場からも流通面でいろいろとチャレンジしています。

Netflixの初の映画「Beasts of No Nation」は興行的にはボロボロのようですが(アカデミー賞の規定に沿うために公開しているだけなので別にどうでもいいのでしょうが)、批評家の評判は良いですし、なりよりNetflixでも回転しているようです。ちなみに普段は絶対に視聴データを開示しないNetflixのTed Sarandos曰く、公開後300万人が視聴したと発表しています。Deadlineの記事(10/18付)によると大手シネコンが本作の公開をボイコットしたこともあり、劇場は31館に限定、興行収入は$50,699に留まっているとのこと。

なお、今回のAmazon Studiosの場合は、Netflixのようにオンラインと劇場の同時公開はせず、一定期間は劇場で公開するようです。

 

 

Vice Mediaが米国と欧州数カ国で今後12~18ヶ月以内にテレビチャンネルの立ち上げを計画、という話

 

 

 

Vice Mediaが米国と欧州数カ国で今後12~18ヶ月以内にテレビチャンネルの立ち上げを計画。この計画は前から言われていたことですが、今回Shane SmithがCNBCのインタビューで名言したようです。

まだ立ち上げに際してのパートナーが明確になっていませんが、米国では 投資も受けているA+E Networksが濃厚。カナダでは既にテレビチャンネルが立ち上がっており、その際のパートナーはRogers Communications。欧州ではNetflix・ITV・Sky・Discoveryと交渉を進めているようです。

 

 

1社で複数国の展開を進めるモデルは良しとせず、各国ごとに提携して進めていこうとしている模様。テレビだけでなく、OTTやモバイル含めて同時配信を進めていくことを想定していることから、交渉には少し時間がかかっているようです。ちなみにベストな提携先は各国の地上波テレビ局、みたいな話も。  

ちなみにインタビューでは財務状況についても少し触れられています。具体的にはViceの売上/利益は毎年倍々で増えており、今年は売上が10億ドル近くまで伸びると予測。また現在時価総額50億ドルでM&Aの話も進めているとのこと。多少ブラフも入っているかもしれませんが。

 

 

 

ティーン特化のMCNであるAwesomenessTVがEndemol Shine Groupと提携、北米以外の海外展開を推進

 写真はAwesomenssTVのFounder & CEOであるBrian Robbins

 

DreamWorks Animation傘下でティーン特化のMCNであるAwesomenessTVがEndemol Shine Groupと提携し、北米以外の海外展開を推進すると発表。具体的には英国・フランス・ドイツ・スペイン・ブラジル。

Endemol Shineは、ファンドの傘下にあった世界有数の番組制作会社EndemolとアメリカンアイドルのIPを抱えるCORE Media Group、21世紀フォックス傘下のShine Groupの3社合弁の制作会社。

AwesomenessTVに限らず、この1-2年でMCNのM&Aが加速してきた中で、各社は自社スタジオの整備とハリウッド人材の登用を推進、YouTubeだけでなくFacebookとSnapchatへの展開を進め、Go90などOTTサービスでのオリジナル番組製作を強化。更にテレビ番組・劇場公開映画の企画も進めながら、独自の動画配信サービス展開と海外展開も加速させています。

 

Thrillist Media GroupがAxel Springerから5400万ドル調達、EC部門のJackThreadsは分社化へ

 

Thrillist Media GroupがAxel Springerから5400万ドル調達。EC部門のJackThreadsは分社化され、同タイミングでOak Investment PartnersとSBNY(SoftBank Capital NY)から調達。ちなみにJackThreadsはThrillistが2010年に買収した会社です。

Thrillist Media Groupは2004年にBen LererとAdam Richが創業、旗艦メディアのThrillist.comは月間1500万UU、その他の出口を含めると8000万UU。従業員は175人、米国と欧州の35都市ごとのローカル版が存在しています。また年間75回ライブイベントも主催。

Axel SpringerのCEOであるMathias Döpfnerは下記のようにコメント。

This investment in Thrillist Media Group is an important part of our strategy to support innovative digital media and compelling content around the world as well as our company’s expansion to the U.S. and other English-language markets

 

Axel SpringerはFT買収に失敗し、その後Business Insiderを3.43億ドルで買収。そして本件があり、英語圏で人気があるオンラインメディアを次々と押さえにかかっています。「ミレニアル世代×男性」という切り口のターゲットだと、HearstもComplex Mediaに対して2100万ドル出資しています。

 ちなみにThrillist Media Groupの創業者であるBen Lererは、現在Lerer Hippeau Venturesという投資会社のマネージングディレクターでもあり、BuzzFeed・Rebelmouse・Food52・Refinery29・Circa・Brit+Co・NowThisなどの名だたる主要なデジタルメディア系に投資、それ以外にもCasperやSoylentなど含め、幅広く投資しています。

 

 

 

 

Samsungが推進してきたモバイル特化の動画配信サービスMilk Video、11月20日でサポート終了へ

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via android centeral

Samsungが推進してきたモバイル特化の動画配信サービスのMilk Videoを11月20日でサポート終了すると発表。すでに今年3月にコンテンツ部門レイオフに着手していたが、Galaxyへのプリインストールを持ってしても、メーカー発の動画配信サービスは立ち上がらなかった、という結論に。

 

 

SamsungはFunny or DieやViceやTastemadeらともコンテンツ配信で契約を締結し、モバイル特化の動画配信サービスを推進してきました。音楽配信サービスのMilk Musicはどうなるかよく分からないですが、個人的にはSXSWでのド派手なパーティーが印象的でした(昨年と今年はちょうどAustin Convention Centerの隣の建物を借り上げていました)。

Samsungは撤退するものの、モバイル特化の動画配信サービスの領域には元HuluのJason Kilarが立ち上げたVesselやVerizonのGo90など引き続き投資が集中しており、まだまだ目が離せないというのは間違いないかなと思います。

 

 

MCN最大手のFullscreenが脱YouTube化、2016年早々に独自の動画配信サービスを開始へ

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MCNのFullscreenが独自の動画配信サービスを開始すると公式ブログで発表しています。ローンチは2016年早々。

Fullscreenは7万人のクリエイターを抱えている世界最大のMCNで、ネットワーク全体の登録者数は6億人、月間再生数は50億回を超えています。Grace HelbigやThe Fine Brosなど人気クリエイターを抱えており、YouTube以外の動画配信プラットフォームにも動画を配信し始めています。現在はOttter Media(The Chernin GroupとAT&Tが作ったファンド)の傘下。

Maker StudiosもMaker.TVを立ち上げて独自に動画配信サービスを開始しており(買収したBlipが母体)、MCN各社はYouTubeに依存しない体制を構築しています。

 

 

映画のウィンドウ戦略のあり方を変えるかもしれないNetflixの「Beasts of No Nation」の話

Netflixがテレビビジネスを変えてしまうかもしれないという議論が沸き起こっている日本での状況を横目に、米国ではNetflixが映画ビジネスを変えてしまうかもしれないと話題になっているようです。

それもこれも、Netflixにとって初となる映画「Beasts of No Nation」が、来月16日にいよいよ劇場公開され、同時にNetflixで配信されるからであり、しかもそれがアカデミー賞を狙えるようなタイトルだと言われているからです。既にベネチアトロントなど国際映画祭で公開、批評家からも高い評価を得ています。

「Beasts of No Nation」は、ナイジェリア出身の米国人作家ウゾディンマ・イウェアラ(Uzodinma Iweala)による処女作で、ベストセラーとなった同名の小説が原作。西アフリカの架空の国で起こった内戦で家族が切り裂かれ、強制的にゲリラの少年兵となった男の子を取り巻く話です。

監督・脚本は大人気ドラマ「True Detective」や映画「Sin Nombre | 闇の列車、光の旅」を手がけたCary Fukunaga。米国映画としては初となるガーナでのロケで、主演はIdris Elba(母親がガーナ出身)と、これまで一度も演じたことがない14歳のガーナ人Abraham Attah。

2005年からFocus Featuresとこの企画を温めてきたようですが、製作準備に入る際に、サンダンスで公開された少年兵を題材にしたフランス映画が米国で配給されないことが判明し、似たようなテーマだった本作は企画が一時頓挫。その後2010年頃に映画化権が原作者に戻ってから、Cary Fukunagaらが再び権利を買い戻し、今度はParticipant MediaとRed Crown Productionsと共に500万ドルをかけて脚本を開発したそうです。

完成後、優先交渉権を持っていたFocus Featuresに続いてNetflixが本作を見て、1200万で全権利を獲得して話題となりました。

 

 90日ルールを死守したい劇場チェーン 


紆余曲折あって出来上がった本作は高い評価を得つつあるにも関わらず、同時公開・配信をよく思わない4大劇場チェーンAMC Theatres・Regal Cinemas・Cinemark Theatres・Carmike Cinemasが上映を拒否、Alamo Drafthouseなどアート作品を取り扱う劇場を中心に全米29カ所での公開だけに留まっています。

一般的にオンライン配信は劇場公開から90日経ってから始めるのが慣例となっており、Netflixがこれに従わないことによって摩擦が起きています。

“There’s no theatrical revenue expectation in our business model on any movie”

ただNetflixのChief Content OfficerであるTed Sarandosが上記のように語っている通り、Netflixはそもそも劇場でのチケット販売で収益化することを想定していません。

そのため、本作に限らずこれから公開されるNetflixの映画は全て同時公開・配信が前提となっています。「Beasts of No Nation」の動向によっては、これまでの映画のウィンドウ戦略が大きく変わる可能性もあり、各所で注目されています。

ちなみに、Netflixは今後Adam Sandlerの「The Ridiculous Six」を12月11日に、「Crouching Tiger, Hidden Dragon: The Green Legend」を2016年初旬に、「Pee-wee’s Big Holiday」を2016年3月に公開。その後「Fifty Sades of Grey」で話題となったJamie Dornan主演の「Jadotville」、そしてBrad Pittの「The War Machine」などの作品が続いています。 

低予算作品が切り崩すかもしれない90日ルール

劇場公開と配信までの時差を短くしようとする試みは、別にNetflixだけが仕掛けているわけではなく、例えばパラマウントも一部の作品で実験的に進めています。

具体的には低予算のホラー作品「Paranormal Activity: The Ghost Dimension」と「Scout’s Guide to the Zombie Apocalypse」の2作品を、劇場公開されてから17日後にオンライン配信することを決めています。決めるといっても、パラマウントの一存で決められるわけではありません。パラマウントはVODの売上の一部をAMCとCineplexに戻す契約を締結して、これを実現しています。

全ての作品でこれが実現できるものでもないと思いますが、ブロックバスター映画でもない限り、大体公開後1~2週間で劇場で得られる売上の殆どは決まってしまいます。90日ルールを維持するために、ガラガラの劇場で映画をかけ続けるくらいであれば、VODの売上の一部をもらいながら新しい作品をかけた方が良いと、劇場チェーンが判断しても不思議ではありません。スタジオにとっても、パッケージ販売やオンライン配信のために、追加で大きな宣伝費を支払うことがなくなるため、低予算の作品の場合は双方にとってそれなりのメリットがあります。

Netflixが劇場チェーンにSVODサービスの売上の一部を配分することはまずないでしょうが、劇場では大きく跳ねないような低予算の作品がきっかけで、ウィンドウ戦略はもっと時代にあう形に変わっていくかもしれません。

   

 

Verizonのモバイル特化型の無料動画配信サービスGo90がクローズドβリリース開始、正式リリースは月末へ

f:id:greatbeyond:20150912151357p:plain(via Verizon)

Verizonの動画配信サービスGo90クローズドβリリース開始、月末に正式リリースされると報じられています。このサービスはモバイル特化のためアプリを介して提供され、価格は広告モデルのため無料。Verizon以外の契約者にも幅広く提供されていくようです(ただしVerizonユーザーのみに配信されるコンテンツもあるようです)。Verizonにとっては広告による収益化に留まらず、より高額なデータプランへユーザーを移行させることでARPU向上も狙っていけそうです。

コンテンツパートナーはComedy Central・Food Network・ESPNNFL Network・Discovery・VH1・MTV・SPIKE・TLC・Adult Swim・HGTV・BET・Investigation Discoveryなどケーブルチャンネル。そしてAwesomenessTV・Vice・Tastemade・Maker Studios・Fullscreen・Stylehaul・Defy・Collective Digital・MachinimaなどのMCN。その他にNFLの試合やライブも視聴可能となっています。

上記のリスト以外で明らかになっているのは、VerizonはAwesomenssTV(DreamWorksTV含め)と200時間分のオリジナル番組を製作することで合意、Viceともオリジナル番組製作で合意し、Machinimaとは110時間分のオリジナル番組の製作と40時間分のキュレーションされた番組の提供で合意を得ています。

HBOとの提携も発表していますが、周辺情報を読んでいく限りではHBO NowはGo90には含まれていないようです。もしかするとTierを分けて提供されるのかもしれません。

Verizonは本サービスを「ソーシャルエンターテイメントプラットフォーム」と位置づけており、視聴履歴からコンテンツがレコメンドされるというよりも、フォローしている友人・知人が見ているコンテンツなどがフィードに上がってくるような仕組みになっているようです。またお気に入りの場面をキャプチャーして、他のユーザーと共有することもできるようです。下記のCNETの動画を見ると分かりやすいです。

 

 

Go90は、英国BBCでiPlayerの事業をリードしていたEric Huggersが、その後Intelに移って推進していたクラウドテレビプロジェクトOnCueがベースになっています。OnCueは今で言うところのDishのSlingTVのようなサービスとして開発が進められていましたが、VerizonがIntelから2014年1月に2億ドルで部門ごと買収して以降、サービスモデルを変更してモバイルに特化させ、無料モデルで再構築しました。

ちなみにEric HuggersはBBCのiPlayer立ち上げ前はMicrosoftやEndemolに在籍しており、一貫してメディアとテクノロジーを横断した領域で活躍した人物。HuluのCEOになると目されていた人でもありますが、現在はVevoのCEOになっています。

そうそう、Go90というのは、縦長のスマホを90度回転させる、というのが名前の由来だそうです。