UNTELEVISED

メディアとテクノロジーの交差点

Pure Softwareでの試練と反省、そしてNetflixの企業文化「Freedom & Responsibility」が出来上がるまでの話

 

 

Netflixが日本でもローンチしたので、これを機会に改めてNetflixについて考えてみたいと思ったのですが、配信タイトル数・競合分析・レコメンデーションの精度・UIUX・オリジナル番組製作などについて色んなところで散々語られているので、そうじゃない視点でちょっと考えてみたいと。

で、どうしても気になることは、やはりNetflixがどうやって創業して最初に立ち上げたオンラインDVDレンタル事業から定額動画ストリーミング配信事業へ軸足を移すことができたのか、つまりどうやってイノベーションのジレンマを乗り越え、いわゆる大企業病に陥らずに、革新的な結果を生み出し続けることができているのか。そのことばかりを考えてしまうのです。

そんな時、たまたま米国の公共ラジオネットワークNPRのサイトに、NetflixChief Talent OfficerだったPatty McCordのインタビューがポッドキャストで流れていたのでとても興味深く聞きました。

  

このPatty McCordという人、FacebookのCOOであるSheryl Sandbergに「シリコンバレーから出てきた最も重要なドキュメント | the most important document ever to come out of the Valley」と言わしめた、あの「Netflix Culture: Freedom & Responsibility」と呼ばれるスライド(通称culture deck)を、Netflix のReed Hastingsと一緒に作った人なのです。

このテキスト中心の、極めて地味なスライドの中に込められた想いや、そこに至るまでの経緯、その結果などについて語られていたので、その周辺の過去記事も読み返しながら、改めて自分なりにまとめてみたいと思います。

 

Netflixの企業文化を作り上げてきた、もうひとりの人物

まず最初にこのPatty McCordという人物ですが、実はReed Hastingsとの関係は比較的長くて、Reed HastingsがNetflixを立ち上げる前、具体的には1991年に作ったソフトウェア会社Pure Softwareで人事担当ディレクターとして一緒に働いていた人なんです。

Pure Software自体は1995年に上場、1996年にAtriaと合併し、1997年にRational Softwareに7.5億ドルで買収されます。その後1997年に、Reed HastingsはPure Softwareで一緒に働いていたMarc Randolphと共に、250万ドルを投じてNetflixを創業します。

ある日の午前2時、Reed HastingsがPatty McCordに突然電話をかけ、立ち上げたばかりのNetflixの話をし、参画してほしいとお願いをしたそうです。Patty McCordは、「DVDを郵送する」という突拍子もないアイデアを電話で聞いた時、すぐには良いと思わず躊躇ったそうです。大体午前2時に電話なんて、そもそもかなり迷惑ですしね。

するとReed Hastingsは、Pure Softwareでやってしまったミスを全部書き出して、二度と同じミスをおかさないようにして、最高の会社を一緒に作ろうと口説いたんだそうです。

結局Patty McCordは1998年、創業間もないNetflixに入社し、その後2012年末までNetflixでChief Talent Officerとして採用やリクルーティングを担っていきます。

ではPatty McCordを含め、初期のNetflixのチームが、どのようにして企業文化を作り上げていったのか。その転機となるのは2001年だったそうです。

 

企業文化を強固にした最悪で最高だった2001年

Netflixの創業は1997年。Reed Hastingsが映画「アポロ13号」のDVDの延滞料金40ドルを支払わなければならなかったことがきっかけとなって立ち上げたのは有名な話です。

オンラインDVDレンタルのビジネスを始めるには、とにもかくにもDVDの在庫を抱え、切手と封筒を買わなくてはなりません。当時の従業員数は30名。世界中のアーリーステージのスタートアップ同様、彼らはとにかくお金がありませんでした。実際、Netflixがレンタルサービスをスタートさせた1997年8月27日時点では、925タイトルしかライブラリーを揃えることができませんでした。

その後、1999年9月にオンラインDVDレンタルの定額モデルをスタートさせたことで急成長。DVDの探しやすさを向上させるためにレコメンデーションも強化して順調に業績を伸ばし、従業員も120名抱えるまで拡大。そしてIPOに向けて準備も進めていきます。 

しかし2001年、ドットコムバブルが弾け、さらに同時多発テロが起きたことによって状況が一変してしまいます。

業績は急激に悪化し破産寸前に。当然IPOの準備は中断し、全従業員の1/3となる40名程度を解雇しなくてはならなくなります。Patty McCordは、Hiring(採用)からFiring(解雇)を担当することになり、映画をレビューする人を全員解雇し、創業初期から大変な時期を一緒に乗り越えてきたエンジニアも次々解雇していきます。

彼女は当時を振り返り、これは厳しい決断だったと語っています。ただ最悪な時期でありながら最高な時期だったとも語っています。

 

自由と責任が企業文化となった瞬間

もしかするとこれは多少運もあったかもしれません。その年のクリスマス、予期せず低価格のDVDプレイヤーがプレゼントとしてよく売れたんだそうです。そしてそのプレイヤーにNetflixのクーポンがバンドルされていたこともあり、2002年には業績が回復し、再び急成長を遂げていきます。職を失った人が、家で映画を見る機会が劇的に増えるという、幸か不幸か、たまたまそういう巡り合わせだったのでした。

  

  

しかしその一方で、これまでよりも少ない従業員で、これまで以上に沢山の仕事をこなさなくてはならない状況に陥ってしまいます。ただこのことで、「Netflixは従業員に何を求めるのか」「従業員がNetflixに何を求めるのか」、それを考える大きなキッカケになったと語っています。

 

あるエンジニアとの対話から気がついたこと

ある時、Patty McCordはひとりのエンジニアが、3名の部下を失ったことで長時間労働を強いられていることに気がつきます。そしてそのエンジニアに近づくなり、なるべく早くこの状況を改善するようにする、つまり可能な限り早く人を増やすからもう少し辛抱してほしいということを言ったそうです。すると、そのエンジニアは「焦る必要はないよ、今の方が幸せだよ」と答えます。そしてこんなことを言ったそうです。

 

"I've learned that I'd rather work by myself than with subpar perfomers"

 

このエンジニアは、部下がいなくなってはじめて、いかに自分が部下のミスをカバーすることに忙殺されていたかを理解できるようになったそうです。そして少人数で全てを決めなくてはならないため、そこには必然的にスピードや自由さが与えられるようになりました。

もちろんお金は足りている状況には変わりませんでしたが、そこには官僚主義は鳴りを潜め、出張の許可も不要になり、自由と責任で物事が動くようになったようです。そして、そういう状況にエンジニアも満足していたと語っています。

少ない会議。少ない意思決定プロセス。そして最高の結果を出す少人数の人材。1/3の従業員をレイオフするという厳しい時を超えて、Netflixにはそれが残りました。そしてそれが最悪で最高な状況を生み出したことに繋がったとPatty McCordは語っています。

 

最高な状況をずっと続けるには一体どうすればいいのか

その頃、Reed HastingsとPetty McCordはお金がないのでカープールして、つまりクルマを乗り合いして会社に来ていました。なんとも牧歌的な時代です。

そして車中で、経営的にまだ苦しいが、今がとにかく楽しくてしょうがない、そんな話をしたと言います。なぜこんなに楽しいのか、こういう状況がずっと続くにはどうすれば良いのか。ふたりは、これから会社が大きくなっても、こういう状況でありたいと願うようになりました。最高の人材が集まり、労働時間ではなくパフォーマンスで評価される。全く新しい雇用形態をつくる。そんなアイデアを、次々と書き出していきます。

イデアは少しずつ追加され、そのスライドは従業員の目に触れるものとなっていきます。そしてそのスライドがネットで公開されると瞬く間に世界中に広がり、色んな人がNetflixの独特の企業文化を知るきっかけとなっていきます。

 

 

私たちはチームであって家族ではない

Netflixの独特な企業文化を語る時、色んな人が色んな切り口で語ることがありますが、このスライドの34ページに「Hard Work - Not Relevent」という項目があります。

 

We don't measure people by how many hours the work or how much the are in the office. We do care about accomplishing great work.

 

Sustained B-leve performance, despite "A for effort", generates a generous severance package, with respect.

 

Sustained A-leve performance, despite minimal effort, is rewarded with more responsibility and great pay.

 

どのくらいの時間働いているかとか、どのくらいオフィスにいるとか、どのくらい努力したかというのは評価する軸にはならないということ。何を成し遂げたのか、そこだけが評価の軸であるということ。

Netflixは無制限に休暇を取得できるポリシーがあり(正確には、休暇のポリシーがないのでいくらでも取得できるということなんだと思いますが)、シリコンバレーでももっとも給料水準が高いと言われています。

そんなNetflixに従業員として採用され、そのポジションを維持するには、とにかく何かを成し遂げなければならない。この一言に尽きます。

 

さらに 22ページにはこういうことが書いてあります。

 

we are a team, not a family.

we are a pro sports team, not a kids recreational team. 

 

もしあなたの役割がなくなったら、事業環境が変わったら、色んなことがうまく回らなくなったら、あなたは解雇される。だからここでずっと働くことを期待しないでほしい。永遠にずっと一緒にいることを期待しないでほしい。どんな好調な時であっても、Netflixはこのスライドで示すようなポリシーを維持してきました。

例えばこんなエピソードがあったとPatty McCordは語っています。

 

オンラインDVDレンタル立ち上げ期の成長を支えた簿記係の話

IPOしてから数ヶ月後の2002年。Netflixにはローラという明るく勤勉な従業員がいたそうです。彼女の仕事は、レンタルされたDVDの数を記録し、権利者にロイヤリティーを正しく支払うこと。成長の初期段階では、彼女は極めて重要な役割を果たしていました。しかしNetflixが上場企業となったことを機に、会社として会計のプロが必要となってきたのでした。ローラは、実はコミュニティーカレッジしか通っていませんでした。Patty McCordは彼女を呼んで正直に事情を話し、手厚い退職金を支払い、彼女を送り出しました。

 

ストリーミング事業を立ち上げたエンジニアたちの話

Netflixがストリーミングサービスを始めると、オンラインDVDレンタルよりも評価が日増しに高くなり、事業が急速に立ち上がり始めました。そしてすぐにデータ処理が追いつかない状態に。似たような動画配信サービスが次々と立ち上がる気配もありました。

Netflixの役員は1年以内にこの課題を解決しなければならないと判断し、ストリーミング事業を立ち上げた優秀なエンジニアを呼び寄せます。これはなんとかしなければならない。するとエンジニアは、「大丈夫、自分たちでなんとかします。私たちでクラウドベースコンピューティングの仕組みを開発します」と応えるのでした。

もしかしたらこの優秀なエンジニアだけで開発することできるかもしれない。ただ、9ヶ月でそれが本当にできるのか。実際にはそれを実現するのは難しく、その問題を解決するためには新しい人を採用しなくてはならないと役員は判断します。そして実際にNetflixはアマゾンを採用、アマゾンデータセンターを活用することを決定します。

Netflixのエンジニアはこの決断を最初はよくは思っていなかったようです。もう自分たちは不要なのか? この事実に向き合った時、Patty McCordは正直に答えるしかありませんでした。そしてそのエンジニアたちは解雇されました。

このエンジニアたちは本当に素晴らしいスキルを持っているし、彼らがいたことでNetflixが爆発的な成長できたことは間違いなかったとPatty McCordは語っています。しかし、Netflixではみんながこのculture deckを見ていました。

課題を解決したい。そしてその課題が解決されたら、また違う課題を解決する。エンジニアたちは、解雇の通達される前に自ら違うを道を選んで飛び出していったそうです。

なかなか厳しいことを言うもんだなと思いますが、Patty McCordは「解雇されても泣いている場合じゃなく、Netflixから飛び立てばいい。なぜならあなたは最高の人材なのだから。ただNetflixではそれを生かす場がなくなってしまっただけなんだ。」と語っています。

Patty McCordは自らを"Queen of Good Goodbyes"と称し、従業員をFire(解雇)したのではなく、Move on(旅立たせた)させたのだと語ります。いわば、おくりびととでも言うんでしょうか。その数、全部で数百人規模にも及んだそうです。

 

Netflixの企業文化を作り上げてきたChief Talent Officerの話

 

 

2001年の大規模レイオフの10年後、Netflixは爆発的な成長を遂げます。最高の人材、最高業績。もう怖いものはないし、失敗もない。まさに黄金時代でした。そんな時、Netflixは大きな失敗をしてしまいます。

Netflixは2011年、コスト構造も対象ユーザーも事業モデルも全く異なるオンラインDVDレンタル部門と、2007年にスタートさせて急成長を続けている動画配信部門を完全に切り離し、前者をQwikster、後者をNetflixという2つの異なる会社に分割することを発表します。

料金の改訂もあって、実質ユーザーにとってみると二重に料金を支払う必要が出てきてしまい、これが大炎上。ユーザーは憤慨し、1ヶ月で80万件の解約が発生してしまいます。そして、この会社分割を推進してきたのがChief Talent OfficerのPatty McCordでした。

結局会社分割はすぐに撤回され、Qwiksterは一度も立ち上がることなく、今私たちが知っているNetflixの体制を維持しますが、大炎上の裏でも、Netflixの事業領域はストリーミング事業に急速に移行していきました。オフィスをハリウッドに移し、オリジナル番組の製作を開始していきます。事業モデルが変化していくに従い、求められる人材も当然変わっていきました。

しかしPatty McCordはエンターテイメント業界での経験が全くありませんでした。Netflixの採用担当のトップでありながら、監督の採用方法も分かりませんでした。彼女のスキルは、その時のNetflixでは役に立たなくなってしまいました。そしてその年の終わりに、Reed HastingsとPatty McCordは話し合いをし、会社を離れることになります。Sheryl Sandbergがスライドを絶賛した、数ヶ月前の話です。

自ら作り上げてきた企業カルチャーや採用ポリシーで、自分を解雇させる。皮肉ではあるものの、徹底している証でもあるように思えます。

 

恐れていた官僚主義、そして企業文化を継承すること

従業員に対してできるNetflixとしての最高の役得(perks)は、豪華な福利厚生ではなく、Aクラスの従業員だけを採用して一緒に働く環境を作ることにあるということ。そして、もしAクラスの人材だけを社内に残したいのであれば、その人がどれだけ優秀で、過去にどれだけ貢献したかに関わらず、役割がなくなった時点で、手厚い退職手当と共に、他に移ってもうということ。

Netflixはどうしてここまで徹底してこの企業文化を継承することができたのでしょうか。それはReed HasingsがPure Softwareで味わった経験に起因しているもののように思います。 

Inc.の記事にReed Hastingsがこう語っています。

 

Management was my biggest challenge; every year there were twice as many people and it was trial by fire. I was underprepared for the complexities and personalities.

 

さらにBloombergにReed Hastingsが寄稿した記事にこうあります。

 

My first company, Pure Software, was exciting and innovative in the first few years and bureaucratic and painful in the last few before it got acquired. The problem was we tried to systemize everything and set up perfect procedures. We thought that was a good thing, but it killed freedom and responsibility. After the company was acquired, I reflected on what went wrong.

 

自身が立ち上げたPure Softwareが95年に上場を果たした後、エンジニアからCEOに転じることになったReed Hastingsにとって、Rational Softwareに売却するまでにの期間は厳しい試練だったと振り返っています。経営者として未熟で、よかれと思ってシステマティックに経営しようとしたことが、自由と責任を重んじる文化を潰してしまった。この強烈な反省が、Netflixの企業文化を継承する強い原動力になったことが伺えます。

そしてQwiksterの炎上があった際、「I messed up. I owe everyone an explanation.」という書き出しで始まる公式ブログで、いかに自分がイノベーションのジレンマを恐れているかを語っています。上場企業の経営者が、ここまで正直に事情を説明することがあるなんて、正直驚きです。

 

For the past five years, my greatest fear at Netflix has been that we wouldn't make the leap from success in DVDs to success in streaming. Most companies that are great at something – like AOL dialup or Borders bookstores – do not become great at new things people want (streaming for us) because they are afraid to hurt their initial business. Eventually these companies realize their error of not focusing enough on the new thing, and then the company fights desperately and hopelessly to recover. Companies rarely die from moving too fast, and they frequently die from moving too slowly.

 

 

Pure Softwareで実現できなかったこと、失敗したことをPatty McCordと共に書き留めたメモがスライドになり、2009年にウェブで公開。それは、過去の自分に送った手紙だったとReed Hastingsは振り返っています。

ストリーミングサービスやオリジナル番組製作そして映画への投資など注目する点は多いNetflixですが、それを支える企業文化を作り上げる過程で、こんなことがあったんだなということを、ちょっと備忘録まで。なんだかまとまらない感じになりそうなので、この辺で。

   

<source>
Episode 647: Hard Work Is Irrelevant : Planet Money : NPR
Ex Netflix exec: hard work isn't enough - Business Insider
How Netflix Reinvented HR
Netflix: Flex To The Max - Businessweek
How I Did It: Reed Hastings, Netflix, Internet Business Models Article | Inc.com
How to Set Your Employees Free: Reed Hastings - Businessweek
Netflix, Reed Hastings Survive Missteps to Join Silicon Valley's Elite - Businessweek

クラシック映画を音楽イベントとして再構築するフィルムコンサートライブの試み

今年は「Back To The Future |バック・トゥ・ザ・フューチャー」の1作目が公開されてから30周年。そしてPart2でドクが訪れた未来が今年という節目。そんなタイミングを記念して、11月に日本で「バック・トゥ・ザ・フューチャー inコンサート2015」というイベントが開催されます。全編を生演奏で見るという映画と音楽が混ざったイベントなのですが、作品もRobert Zemeckisも大ファンなので、迷わずチケットを購入したんです。

で、このイベント、実は映画の新しい収益化の手法として急成長しているという記事がVarietyに出ていたので備忘録として。今回日本で開催されるイベントも、もともとは米国を中心に各国で公演されたものが日本に持ち込まれたわけで、これからもどんどん増えてくる予感がします。

このイベントを仕掛けているのは、舞台を手がけるマネジメント会社IMG Artistsと音楽に特化したタレントエージェンシーGorfaine/Schwartz Agency(GSA)による共同出資会社Film Concerts Live!(FCL)。GSAはJohn WilliamsMichael GiacchinoAlan SilvestriMike PostThomas NewmanJames Newton HowardSteven Priceなど、映画音楽で活躍している巨匠と呼ばれる音楽家・作曲家のマネジメントを行っています。

尚、FCLはこれまで「Back To The Future」以外にも「E.T.」「Raiders of the Lost Ark | レイダース/失われたアーク《聖櫃》」「Star Trek | スター・トレック」「Star Trek-In To Darkness | スター・トレック イントゥ・ダークネス」「Home Alone | ホームアローン」の公演を行ってきたようです。

日本ではどうなのか分かりませんが、「Back To The Future」の米国公演の場合、本作の映画音楽を手がけたAlan Silvestriがこのために20分間のオリジナルスコアを書き下ろしするという特典も。

Instagramの投稿なんかを見ていると「E.T.」とかもすごい良さそうです。

 

米国Huluが広告無しの配信オプションをスタートさせるという話(ただし一部の番組を除く)

  

米国Huluが月額12ドルで広告無しの配信オプションを提供開始すると発表。HuluのプレミアムTierに追加で4ドル払うことで広告を外すことが可能になりますが、それでも7番組には引き続き広告が付くそうです。具体的には下記の番組。

 

・New Girl
Scandal
・Once Upon a Time
・Agents of Sheid
・How to Ge Away With Murder
・Grey's Anatomy
・Grimm

 

広告は15秒のプリロールと30秒のポストロールでミッドロールは無し。

もともと広告付きの見逃し配信から始まったサービスなので、NetflixやAmazonには広告がないのにHuluにはあるっていう議論自体が意味がないことだと思いますが、プレミアムTierでも広告があることにクレームは少なくなく、近年広告無しモデルの導入時期を見定めていたと言われています。ただケーブルテレビや映画館や雑誌は、有料なのに広告が付いているわけなので、別に批判されるようなことでもない気もします。

尚、広告無しのオプションのために月額12ドル(年額144ドル)を払う人がいるのかどうか疑問の声も。Netflixは月額9ドル(年額108ドル)、Amazonは年額99ドル。 HBO Nowは月額15ドル、Showtimeは11ドル。これもライブラリーの数が違うので比較することに意味があるのかよく分かりませんが。

 

deadline.com

Maker StudiosがDisneyXDとテレビ番組化も見据えたインキュベーションプロジェクトを開始、Disneyからの年末までの追加ボーナスも確定へ

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Disney Channelの姉妹チャンネルであるDisney XDと、Disneyが買収したMCNのMaker Studiosが、YouTubeから生まれる新しいタレントの発掘プロジェクト「Disney XD by Maker」を発表。Maker StudiosのMaker Offersというクリエイターとクライアントを結びつける既存のプラットフォームを活用し、最大1000ドルの資金を提供します。

クリエイターから動画企画/コンセプトを募集し、YouTube・DisneyXD.com・Disney XDのアプリでの配信され、評価が高ければDisney XDで番組化される流れ。18歳以上の所属クリエイターが対象。既にMaker Studiosに所属するCaptainSparklez・ forrestfire101・ZexyZek・101DarkMonkey・EvanTube・Luzu and Lana・Random Encountersとのプロジェクトは進められているとのことです。

Disneyは2014年5月にMaker Studiosを5億ドルで買収を発表、2015年末までの実績によって最大4.5億ドルの追加ボーナスを支払うというアーンアウトのディールを結んでいます。これまでDisneyと直接関わりのあるような事業を展開してこなかったこともあり、これからの評価でどれだけ追加ボーナスが払われるかが注目されています。

 

 

 

欧州最大のメディアコングロマリットである独ベルテルスマン、好調な業績をテコにデジタル事業を拡充

 

 

ドイツのメディアコングロマリットであるベルテルスマンが、上半期の実績が2007年以来では最高となったと発表しています。具体的には売上31.3億ドル・営業利益7.02億ドルという状況。

ベルテルスマンは、欧州最大のテレビ放送グループRTL Group、テレビ番組制作のFremantleMedia、出版のPenguin Random House、音楽のBMGを抱えおり、そのコアビジネスはテレビ放送と番組制作という旧来のビジネスに依存しています。

ちなみに、今回の業績はRTL Groupが好調だったことに加え、Penguin Random Houseから出版されたポーラ・ホーキンズの新刊「The Girl on the Train」(全米で200万部以上売れ、最速ベストセラー記録を達成)と、映画も話題となったE.L.ジェームズの「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の販売が好調だったことも要因と報じられています。

そんなベルテルスマンですが、コアは放送関連ビジネスではあるものの、昨今の好調な業績を背景にデジタル領域への大胆な投資が活発で、RTLの事業のコアをデジタルに転換させようとしています。

例えば2013年6月にはカナダのYouTube MCNのBroadbandTVに3600万ドル出資し株式の51%を取得。また2014年6月には動画広告プラットフォームのSpotXchangeに1.44億ドル出資し株式の65%を取得しています。

さらに2014年11月には女性向けファッション・ライフスタイルに特化したYouTube MCN大手のStyleHaulを1.07億ドルで買収、成長プランを支えるために追加で2000万ドル出資しています。ちなみにRTLの親会社にあたるベルテルスマンの投資部門Bertelsmann Digital Media Investments (BDMI) は、2013年の時点で既にStyleHaulに出資していました。

 

f:id:greatbeyond:20150901231817j:plain(via StyleHaul)

 

そして今年6月にはデジタル事業を集約してRTL Digital Hubを形成、ポートフォリオとグループ全体の成長を加速させていくと発表しています。さらにブラジル・インド・中国など、欧州や米国以外の成長市場にも進出し始めており、もはやたまたま本社がドイツにあるメディアコングロマリット、というような感じになっています。

ドイツで言えばProSiebenSat.1 Mediaもそうですが、投資部門との連携がとてもうまく噛み合っているように見えるので、また別途まとめてみたいと思います。

 

 

SnapchatのDiscover・Live Storiesにおける動画広告は0秒で再生数にカウントされる?

 

SnapchatはDiscoverやLive Stories内の広告枠の販売を、ユニバーサルピクチャーズやコカコーラなど一部のブランドに対して行っていますが、Digidayの記事によるとSnapchatは広告がロードされた時点で動画広告が再生されたと見なしているようです。つまり極論1秒も見なくても再生されたとカウントされるみたいです。

 

 

ちなみにTwitterは100%のビューアビリティで3秒、Facebookは最低50%のビューアビリティで3秒で再生にカウント。Snapchatは縦動画というフォーマットの特性上、スクロールすることもないので、ビューアビリティの考え方が他と違うのも多少頷けるところですが、この辺の透明性はSnapchatに限らず今後全てのプラットフォームに求められてくる感じでしょうか。

 

Facebookが動画領域の拡充に伴い、(遅まきながら)投稿動画の権利侵害の対応に本腰を入れるという話

 

 

Facebookが動画の直接投稿を促しているのは周知の事実ですが、その一方で違法動画への対策が遅れており、例えばYouTube MCNの大手FullscreenのGeorge StrompolosはFacebookを名指しで批判していました。

 

 

 

事実、YouTubeなど他のプラットフォームで配信していた動画を違法な手段で再投稿する、いわゆる「freebooting」が横行しており、個人ユーザーだけでなく、キュレーションメディアもその動画から大きなトラフィックを稼ぐという状況が続いていました。これは動画領域の拡充を推進するFacebookにとって訴訟されるリスクであり、その対応が注目されていました。

Facebookは既にAudible Magicが開発した技術を活用し、いわゆる音声によるフィンガープリンティングによるマッチングで違法動画が検出できるように対応していましたが、両社はこの技術をさらに拡張させた新しい仕組みの導入のために、Fullscreen・ZEFR・Jukin Mediaなどいくつかのブランドやクリエイターとテストを行っていると公式ブログ等で発表しました。

ちなみにこの仕組みは、YouTubeが6000万ドルを投じて開発し、2007年から運用しているContentIDと同じような仕組みだと思われますが、ContentIDが優れている点は権利侵害している動画を単に削除要請できる以外に、その動画から権利者が収益化できるオプションが与えられている点にあります。Googleによると、これまで5000のコンテンツオーナーがContentIDの仕組みを活用し、総額10億ドルを収益化しているコメントしています。

もしかするとFacebookもユーザー投稿による収益化を進めているのかもしれません。

 

 

Netflixが動画配信サービスのグローバル展開と共に進めるオリジナル番組のローカルプロダクション戦略

 

 

Netflixはグローバル展開を加速させるために、フジテレビや吉本興業との取り組み以外にも各国でローカルプロダクションを推進しています。もう少し正確に書くと、各国それぞれの市場に合わせたオリジナル番組の製作というよりも、現地語で作られた番組を、当該国を中心に世界向けに配信させるという戦略と言った方が正しいかもしれませんが。

具体的な事例としては、例えばブラジル市場向けにポルトガル語で作ったコメディ番組「A Toca」を筆頭に、フランス市場向けにはフランス語で作っている政治ドラマ「Marseille」の企画が進められています。英国市場向けには、エリザベス2世と歴代首相たちとの謁見を描いた舞台作品"The Audience"を原案にしたドラマ「The Crown」が進行中。

 

 

中南米市場向けには、コロンビアの麻薬犯罪を描いたスリラードラマ「Narcos」や、メキシコの歴代興行収入の記録を塗り替えた人気映画「Nosotros los Nobles」のプロデューサーが製作するコメディ番組「Club de Cuervas」が進められています。

 

 

カナダ市場向けには、通信最大手Roger Communications傘下のテレビ局Cityと共同でドラマ「Between」の製作が進められています。ちなみに「Between」の座組みはちょっと変わっていて、Netflixは最初はカナダ以外の全世界の配信権しか持っておらず、2年目からカナダでも配信できるようになります。1年目はカナダ国内でSVODサービスを展開しているShomiで独占配信されます。

その他にもオーストラリア発のティーン向けの番組で、現在世界120カ国でロングラン放送されている「H20: Just Adds Water」という人気番組を元になって生まれた「Mako Mermaids」というオリジナル番組もあります。この辺まで来ると、別にオーストラリア向けということでもなんでもなく、オーストラリアの人気番組企画を世界に向けて配信するという感じになってきますが。

ちなみにローカルプロダクションを進めるもうひとつの理由に、現地の映画産業保護政策に貢献していることを示す必要があるということも挙げられます。そのため参入する国をロケ地として、現地のクルーを雇用して作品を撮ることで、貢献していることを示そうとしている部分もあります。これは特にフランスで顕著で、例えばドラマ「Marseille」は、パリにあるプロダクションが全編フランスロケで現地クルーを使って撮影しています。

その他、Netflixのオリジナル番組の初回配信日はNetflix Originals Premiere Datesにまとまっているので備忘録として。

 

 

 

ソフトバンクの業務提携に見るNetflixのグローバル展開と各国の通信会社との提携状況について

 

Netflixの日本参入が直前に迫っている中で、ソフトバンクとの業務提携が発表されました。メディアでは大々的に報じられていましたが、Netflixが通信会社と提携するケースは、別にソフトバンクが初めてというわけではありません。

例えばフランスでは通信業界3位でブイグテレコム(モバイル契約者の市場シェア14.5%、ISP市場シェア8%)と提携し、ブイグが提供するセットトップボックスを介してNetflixが視聴できるようになっています。また、これに続いてフランスの通信最大手のオレンジ(つまりブイグテレコムの競合)とも提携し、オレンジが展開するセットトップボックスでもNetflixが視聴できるようになっています。

似たようなディールだと(順不同)、米国ではTモバイル、英国ではVirgin Media、ドイツではドイツテレコム、イタリアではテレコムイタリアと提携。ボーダフォンに至っては、英国・ドイツ・オランダ・ニュージーランドにおいてNetflixと提携していて、4Gのパッケージに加入すると半年間無料でNetflixが使えるというようなディールを結んでいるようです。

モバイルでも固定でも、通信会社は自分たちの独自の動画配信サービスもやりながら、ディストリビューション部分で4Gや高速ブロードバンド/光回線へのアップセルにも繋がる好材料としてNetflixのディールを捉えており、逆にNetflixとしてはマーケティングコストを圧縮してサービスを訴求することができるので、双方にとって良い取り組みなんだろうなと。

通信会社の本分は土管なので、自社の動画サービスがこのディールで伸びなくなったとしても、より高額のコースに加入してもらえる方が良いわけなので、別に自社サービスが結果として続けられなくなっても問題ないんだと思います。

 

 

 

Netflixがサービス価値維持のために欧州における月額利用料を値上げ、英国・北欧は値上げ済み

Netflixがヨーロッパで月額利用料を値上げしたという話。

ドイツ・フランス・オランダは月額$10 (€8.99)が$11 (€9.99)に変更、スイスは$15.26 (14.90スイスフラン)から$13.20 (12.90スイスフラン)に変更。英国と北欧は料金変更済み。尚、既存契約者は料金は変わらず、新規契約者のみに適応。

米国でも過去値上げがありましたが、その時と同じように、あくまでもサービス価値の維持向上が目的とされています。

ちなみにNetflixは公表していませんが、英国の調査会社Future Source Consultingによると、フランスの契約者数は推定75万件、ドイツは推定65万件、欧州最大の契約者を誇る英国は推定450万件、ということのようです。

正確なのかどうか分かりませんが、とあるサイトに各国のNetflixの月額利用料金がまとまっていたのでメモ書きとして引用。

 
CountryBasic ($AU)Standard ($AU)Premium ($AU)
Argentina $7.99 ($10.48) $8.99 ($11.80) $11.99 ($15.73)
Australia $8.99 ($8.99) $11.99 ($11.99) $14.99 ($14.99)
Austria €7.99 ($11.32) €8.99 ($12.73) €11.99 ($16.98)
Belgium €7.99 ($11.32) €8.99 ($12.73) €11.99 ($16.98)
Brazil R$17.9 ($7.27) R$19.9 ($8.09) R$26.9 ($10.93)
Canada $7.99 ($8.25) $8.99 ($9.28) $11.99 ($12.38)
Chile $3790 ($7.93) $4290 ($8.98) $5690 ($11.91)
Colombia $14000 ($7.13) $15700 ($8.00) $21000 ($10.70)
Costa Rica $7.99 ($10.48) $8.99 ($11.80) $11.99 ($15.73)
Denmark 69kr. ($13.08) 79kr. ($14.98) 109kr. ($20.67)
Finland €7.99 ($11.32) €8.99 ($12.73) €11.99 ($16.98)
France €7.99 ($11.32) €8.99 ($12.73) €11.99 ($16.98)
Germany €7.99 ($11.32) €8.99 ($12.73) €11.99 ($16.98)
Ireland €7.99 ($11.32) €8.99 ($12.73) €11.99 ($16.98)
Luxemborg €7.99 ($11.32) €8.99 ($12.73) €11.99 ($16.98)
Mexico $89 ($7.64) $109 ($9.36) $149 ($12.80)
Netherlands €7.99 ($11.32) €8.99 ($12.73) €11.99 ($16.98)
New Zealand $9.99 ($9.80) $12.99 ($12.75) $15.99 ($15.69)
Norway 79kr ($12.88) 89kr ($14.51) 109kr ($17.77)
Panama $7.99 ($10.48) $8.99 ($11.80) $11.99 ($15.73)
Sweden 78kr ($11.86) 89kr ($13.54) 119kr ($18.10)
Switzerland 11.9chf ($16.10) 12.9chf ($17.45) 17.9chf ($24.22)
United Kingdom £5.99 ($11.61) £6.99 ($13.55) £8.99 ($17.43)
United States $7.99 ($10.48) $8.99 ($11.80) $11.99 ($15.73)

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